谷崎潤一郎「陰翳礼讃」の礼賛
数日前、FM放送JWAVEで谷崎潤一郎「陰翳礼讃」をとりあげていてびっくりした。
FMラジオって英語(OR日本語)ぺらぺら、内容空疎、音楽垂れ流しで終始するかと思っていたが専門の学者を呼んでのかなり本格的な内容だった。
図書館に行ったら載っている本があった。価格5000円のかなり本格的なものだった。
「作家の随想6谷崎潤一郎」というもの。(株)日本図書センター発行(1996年)
この値段じゃあまり売れないのでは、と思ってしまう。余裕のある方は協力してお買い上げください。編解説が千葉俊二となっていた。FMで解説していたのはこの先生かもしれない。第一人者らしくよく書いてある。
この随筆は倚松(イショウ)庵随筆に載っているものだけど、本人も「ただ気まぐれな感想を漫然と寄せ集めたものではない」と言っており、実際、内容、分量とも相当に綿密かつ長いもので論文といっても差し支えないだろう。千葉氏は随筆中「陰翳礼讃」を一連の随筆作品の中でも頂点に位置するという。そして内容を次のようにまとめる。
『美というものは常に生活の実際から発達するもので,暗い部屋に住むことを余儀なくされた我々の先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添う様に陰翳を利用するに至った』という認識のもとに~(略)~顔と手先だけしか浮き上がってこない文楽人形、女性の白い肌や燃ゆる紅など、すべて陰翳の作用を離れて美はないと説く。
~(略)~日本の伝統美は『物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にある』という見解を示す。これはとりもなおさず、世界を実体としてではなく、関連性において捉えようとする方向を示すものである。
なるほどね。照明家は無論、建築家、デザイナーにとって日本的「美」理解と整理にとても参考になることがわかる。
(2014.11.3記)