理由があって中高年から派遣労働の職に就かざるを得なかった人の経験話
自分の息子世代に当たる20代社員に、作業能率を秒単位でチェックされ、
「ほんとにおまえは馬鹿だな」
「中高年は汚いからダメ」
「てめえみてえなじじい、いらねえから」
といわれながら
塩素ガスがたちこめる密室で6時間にわたって「イチゴのへた取り」、
倉庫内で1日中カッターナイフをふるう「ダンボール箱の解体」などに当たったそうだ……。
正社員でないものはエレベーターを使うなと言われたこともあるとか。
このNさん、家族の看護もあり会社を辞め8年主夫を行ってきたがいよいよお金に困り派遣労働に就いたとのこと。
人不足の飲食業界だったら違うのではという質問には、コンサルタントは手のシミが汚くまずく見えるから中高年は雇うなともアドバイスしているとのこと。
若手から中高年への差別という視点は気が付かなかった。
いや、だれもそういう場面に遭遇すればそう思うのかもしれない。
物覚えが悪い、動きがにぶい、シミ・しわが汚い……。どうしようもない年齢による差異による差別。
Nさんはどんな人かというと、東大を出て放送局に勤めていた方。そういう人でも中高年になり、ブランクがあると(3か月以上あると危険視される。ましてや8年もあってはアウトとのこと。)派遣労働程度しか見つからなかったという。
人材派遣という名の「人間キャッチボール」では、
ボールの種類や性能は問われない。
人材派遣会社も派遣先企業も、ボールを大事にしない。
思った通りに飛ばないボールは、ただ捨てられるだけだ――。ともいっている。
以上、5.25のFM放送J WAVEで聴き、知ったこと。
最後に、営業何十年のキャリアより軽くても資格の方が役に立つ、ブランク期間は作るなといっていたのが印象深い。
常勤の勤務形態を拒否し、必要あるときだけアルバイトをすればいいと低所得の生活維持にカッコよさ・潔さを見出す傾向が一部にある。
それは本人の価値観に基づく選択の問題とは思うが、今若い人も100%中高年になる。そうなると契約社員はおろかアルバイト先の確保すらハードルが高くなる。体の状態に支障が生じている確率も年齢に正比例して高くなる。
そういった時に生じるリスクに最低限のプライドを維持しながらどう対処するかを考えておいた方がいいと思う。
中沢彰吾 中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇 (講談社現代新書)
2015.5.25