黒川さんて若い時から有名だが設計も人柄もあまり好きにはなれなかった。
就職したての頃、職場で彼の事務所に何かの依頼をしたらしかったが、彼と大学の同窓に当たる上司は何かの提出物に対してその仕事ぶりを怒っていた。
何の理由かわからないがへーと思ったことが思い出される。
長い年月が経ち、離婚して女優と結婚したり、選挙に出て落選したりと相変わらず。
そのままの固定的評価で終わると思っていたが、何かの拍子に小さな設計の写真を見るとずいぶん若い時と違っているように思われてきた。
そして、冒頭の国立新美術館!
感動を覚えた。
美術や建築デザインの分野ではその表現するものは運動選手の運動能力と違ってどんどん進化と深化が可能なのだ。
黒川さんは晩年になるほどいいものを創り出しているような気がする。
歪みの外観でありながら安定感と和の趣を感じるから不思議だ。
内部は木張が多く(この点は九州国立博物館に近い)、冷たさは感じられない。
孟宗竹を植えてある中空の中庭もある。
全館隅々まで集中していい仕事をしている。
その点で前川國男氏の東京文化会館に似ている。
遺作にして最高傑作ではないか。安藤さんを超えていると思う。
中にはただで入れる。
窓に向かっている椅子に座ってぼんやり外をながめるのも良い。
2014年12月、事務所は経営破たんしたとか。有名建築家が亡くなっても事務所として存続しているところが多いのにどうしたことか。
2015.5.7