反射性置き屋根の製作
京都冷泉家の庭の一角に立派な蔵が立っている。
国宝藤原定家・俊成の書を現在なお保管する現役の蔵だ。
その蔵は置き屋根だ。
<撮った写真見つかれば後日紹介します。>
小さな小屋にこの考えを何とか導入したいと思っていた。
すべてを断熱材に頼らないで酷暑をしのぐにはこれが最善と思えるからだ。
きっかけがあり、今回着手することになった。
と言って1層として天井の上の野地板に壁土を敷く本来の置屋根を作るのではない。
そんなたいそうなものは作れないし、真似して作るのは面白くない。
もっと手軽で独自のものをつくるつもり。
➀ きっかけ
新たに屋根を葺くのではない。既存屋根材(瀝青系波板)の変更として行う。
なんで変更するかというと劣化が著しいので。
色落ち、素材の軟化はともかく釘穴が拡大傾向にある。
この素材、波高さが高い。なので70㎜前後のネジを使っても野地板に食い込む長さは短く保持する力が弱い。それで重量、強風等でずり下がるのではないか。
そう推測する。
2017.12.3記
② 冷泉家とお蔵
SDカードが見つかった。
2007年11月だった。もう10年になる。
1年に数日、秋に公開している。
立派なおそらく日本最高のお蔵だろう。
置屋根、米国大統領車を思わせるような分厚い壁、低い位置にあるおそらく換気用口。中を一度でも拝見したいものだが家族でもなかなか入れないという。
後ろの建物は同志社大学
どんなものが収蔵されているか、学生が説明していた。
質問したが応えられなかった、その程度。
手前にある井戸の意味は?
大火に見舞われどうしようもなくなった時、ここに放り込んで燃えるのを阻止する。
究極の選択。
藤原家末裔のご家族は命を懸けて国宝を保存している。
博物館に委託するよりいいと思う。
正倉院は今空っぽで、隣の鉄筋コンクリート二棟に保管されているが最初の一棟は失敗して2棟目を作ったらしい。コンクリートと人工換気が優れているという保証はない。
③ 置き屋根の内部壁塗り屋根の状況
置屋根の外観はチラホラ外から拝見できるが伝統的置き屋根の内部壁塗り状況はどうなっているかわからない。
次の尾上組さんのHPで目にできた(感謝)。
これなら断熱も防火にも有効という感じがする。
しかしその上の屋根を支える柱類の太いこと。大工事になることがわかる。
http://onoue-house.com/archives/1362
④ 置屋根の試行
屋根の上に屋根をかけるなんて「屋上屋を架す」と言って無駄なことをするたとえになるほど。
普通だったらやろうとするはずはない。ところがやることを決意したのは試行で結果が出てしまったから。ちょっと説明しよう。
かって畳一畳大のスペースの三角ハウスをつくった。
12㎜合板の内部は断熱材+杉むく板。これで何とかなるだろうと思ったがならなかった。
耐えられない夏の暑さ。40度近くになる。
内断熱がダメなら外断熱をと外に断熱材を張ったが焼け石に水だった。
万事休す。取り壊すしかないかと思ったがその前に屋根に屋根をかけることを考えた。
12㎜の白色樹脂製型枠材を一定の間隔をあけて載せた。
初めて効果を体感できたのだ。
壁内通気法なんてチャラいものではない。向うが見える日傘、四国遍路でおなじみの菅笠に近い。
こりゃ凄いと実感できた。
2017.12.4記
⑤ 私流置き屋根づくりの根幹
ここで後に続く夢ガーデンで行う置屋根づくりの特徴を述べたい。
1 第一の屋根は土ではなく野地板までをそれと扱う。
したがってこれまでの普通の屋根の修正として行える。屋根材下地の防水シートを
耐候性に富むいいものに変更する程度。
2 その上に縦に何本かの厚みのある板を等間隔に敷く。ここが重要なところだ。
・上に乗せる屋根材を支える機能
・屋根材下の暖まった空気を高速に上昇-解放させる機能を受け持つ。
3 2の縦の板(ツーバイ材の厚み程度=89㎜程度を想定)の上に横さんを渡して屋根
材を葺く。この厚みが30㎜なら屋根下の空間深さは89+30=119㎜ということにな
る。
私の場合は残念ながら頂部との兼ね合いから間柱を使い、27+27㎜=54㎜、断熱
材10㎜を介在させても64㎜ということになってしまったが。
4 屋根材の選択
伝統的置き屋根は防火の意味もあって瓦を使用する。私はガルバ鋼を選んだ。
軽く、薄く、耐候性に富み、価格も相対的に安価。実力ある新進建築家が多用するこ
ともその良さの証明ともいえるのではないか。
私は、さらにガルバ鋼の光(熱)反射性に注目しこれを重要視するので必須となる。
ただし条件を付けた。波板のあのお粗末感にはついていけない。河川敷の不法建築を
想い出してしまう。そこで角波板タイプを選択した。これで一気にモダンな印象とな
る(独りよがりと言われればそれまでだが)。
以降順次紹介していく。
2017.12.6記